2023/02/11 アクセスカウンタ・アクセス解析タグ入れ替え(内容に変更ありません)
2021/01/13 PHS契約解除に伴う追記
目次
1. 概要2. パーツ
3. 構成・回路
4. 実験
5. あとがき
6. 参考にさせていただいたサイト・情報
1. 概要
すなわち、電話回線に、FAX送信時と同じ音声信号を乗せることができれば、受信側では、画像を受信できるはずです。
今回は、FAX付き電話機からPHSに対してFAXを送信し、PHSで受信した音声を、PCに接続したモデムに入力し、PCで受信する実験を行いました。
また、PHSの音声をモデムに入力する際に、イヤホンマイク端子を使用せず、音響結合での受信を試みました。
(以下、2021/01/13追記)
2021年1月11日付で、この実験で使用していたPHSについて、「2020年現在日本国内でPHS通話サービスを提供している唯一の電気通信事業者」とのPHS契約を解除し、W-CDMA/LTE方式の携帯電話契約に変更しました。
こちらでは、この実験を再現・追試することはできなくなりました。
(追記終)
2. パーツ
- 家庭用FAX(Panasonic製)
- NTT 加入電話回線(!
- PHS(SHARP製 WS020SH "WILLCOM 03")
- モデム(IO-DATA DFM-56U)
- 電話機(局給電で動作するもの)
- PC
- 電池(1.5V 4本)
- ローゼット(RJ-11 2口)
- 120Ω抵抗
「NTT 加入電話回線」に至ってはもはや「要素」です。
構成・回路の項で触れますが、電話機(モデム含む)に流れる電流の範囲が規定されているため、抵抗を用います。
定電流ダイオードを用いるべきところでしょうが、持ち合わせがないため、抵抗で簡易的に代用します。
なお、端末設備等規則第13条第3項において、「アナログ電話端末は、電気通信回線に対して直流の電圧を加えるものであつてはならない。」と規定されています。
また、電気通信事業法第69条において、「利用者は、(中略)電気通信回線設備に端末設備を接続したときは、当該電気通信事業者の検査を受け、その接続が第五十二条第一項の総務省令で定める技術基準に適合していると認められた後でなければ、これを使用してはならない。(以下略)」と定められています。
すなわち、今回のパーツのうち、無改造の、家庭用FAX・電話機・モデムのそれぞれ単体を除いて、今回の実験で使用している実験装置を、電話回線に接続することは法律で禁止されています。
違反して、電気通信事業者(NTT等)の設備に損害を与えた場合、電気通信事業法第180条に基づき、2年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑に処せられます。
今回の実験で使用している実験装置を、絶対に、事業用電気通信回線設備(平たく言えば電話回線)へ接続しないでください。
3. 構成・回路
家庭用FAXはNTT回線に通常通り接続されています。
電話機とモデムはローゼットを使用して、電池・モデム・電話機が並列になるように接続します。
電話機のオフフック時の抵抗は50-300Ωで、電流は15mA-130mAと規定されているので、電池は120Ωの抵抗を挟んで、15mAになるように電流制限をします。
(電話機のオフフック時の抵抗が300Ωいっぱいだとしたら、若干15mAを下回りますが・・・)
2台の電話機は、電池と共に直結することで、音声を送受することができます。もちろん、電話機同士でなくとも、片方がモデムでも同様です。
したがって、モデムと電話機を電池と共に直結することで、モデムによって変換された音声信号は、送受話器から聞き取ることができるようになります。
また、適切な規格でに変調された音声信号を送受話器に聞かせれば、そのままモデムへ入力され、復調されてデータとして受け取られます。
すなわち、モデムと電話機を電池と共に直結すると、モデムと電話機は一体になって、簡易的な音響カプラを構成することができます。
なお、この構成された装置は、絶対に電話回線へ接続してはいけません。
4. 製作・実験
(原稿が上下逆に差されているのは撮影時のミスです。)
(茨城なとぅー先生のご厚意で、実験用に画像を使用させていただいております。GRATEFUL TO @MofuNattou !)
この装置を使用した実験の動画を撮影しました。
3.で構成した音響カプラをスタンバイさせます。送受話器はオフフックしておき、PCではFAXを受信状態にしておきます。
まず、FAXに原稿をセットし、PHSの電話番号(070-5/6xxx-xxxx)に電話をかけます。(動画では電話機が自動的に電話番号の前に0036をつけています)
PHSが鳴動するので、PHSで着信応答し、PHSの受話口を電話機の送話口に、PHSの送話口を電話機の受話口に重ねます。
このとき、外からの音声ノイズを拾わないように、手でしっかりと送受話口を覆います。
製品としての音響カプラでは、防音構造になっていますが、今回は電話機を音響カプラ代わりにしているので、「人力」で防音します。(_ _;;;
ここからはITU-T T.30に従って通信が行われます。
PHSからは、FAXが発しているCNG(発呼トーン)信号が、音響カプラからは、CED(被呼局識別)信号・DIS(デジタル識別)信号が聞こえ、PHSから回線を通じて、FAXでCED・DIS信号の音声が受け取られます。(動画 00:37)
DIS信号の音声を受信したFAXは、DCS(デジタル命令)信号・トレーニング信号の音声を送ります。ここまではV.21で行われます。
トレーニング(動画 00:45)で9600bps(V.17/V.29)/7200bps(V.17/V.29)/4800bps(V.27ter)/2400bps(V.27 ter)を順次試行し、最後の2400bps(V.27ter 1200baud DQPSK(=V.26 Alt.A相当))での接続を確立し(動画 01:21)、FAXメッセージが送信されます。
人力簡易音響カプラではV.26 Alternative Aが限界のようです。
FAXメッセージが送信されると、再びV.21でFAXからPHSを通じてEOP(手順終了)信号の音声が送信され(動画 02:59)、音響カプラからMCF(メッセージ確認)信号の音声ががPHSを通じてFAXに送られます。
最後に、DCN(切断命令)信号の音声をFAXが送出して、終了します。
PCの受信画面を見ると、送信原稿を読み取ったものが表示されています。
5. あとがき
今回は、モデムとPHSの接続に、電話機を直結した簡易音響カプラを介した音響結合を用いました。
かつては、「セルラーケーブル」という、φ2.5イヤホンマイク端子とモジュラープラグを変換するケーブルがあり、モデムと接続することで、PHSと電気的結合することができました。
PHSはサンプリング周波数8kHz, ADPCM, ビットレート32kbpsで音声通信を行っているため、サンプリング周波数8kHz, AMRによるハイブリッド符号化, ビットレート12.2kbpsの第3世代携帯電話(W-CDMA方式)と異なり、モデムで変調されたデータ通信にも耐えうる品質となっています。
W-CDMAのiPhoneでも同様の実験を行いましたが、CED・DIS信号の認識すら行えませんでした。
なお、セルラーケーブルは、WS020SHではイヤホンマイク端子に平型端子を採用しているため、使用できません。
どうしても接続するとすれば、平型のイヤホンマイクを購入して、端子部分を流用してハイブリッド回路とつなぐしか・・・
FAX以外にも、ダイヤルアップ接続によるインターネットも、同様に音声信号に変換してデジタルデータ通信を行っているため、今回の実験と全く同じ装置で、PHSからISPのダイヤルアップアクセスポイントに電話をかけることで実現できます。
実験したところ、接続の確立は、やはり2400bps(V.22bis 600baud 16QAM)が限界で、インターネット通信は、ある「例外」を除いて、事実上不可能でしたが(_ _;
・・・「例外」とは、かの有名な、このサイトです。まさかこんな環境においても耐えうるとは・・・
人力で音響結合すると、両手が塞がるため、操作する時は、厚手のタオルを巻いて防音・固定するとよいでしょう。
最後にもう一度。
絶対に、今回の実験で使用している実験装置を、事業用電気通信回線設備へ接続しないでください。
6. 参考にさせていただいたサイト・情報
- TTCドキュメントデータベース(一般社団法人情報通信技術委員会)
- ITU-T Recommendations and other publications(International Telecommunication Union)
- 有限会社 ケプストラム
- なひたふ新聞
- 擬似交換機の作成(その1)(SIN@SAPPOROWORKSの覚書)
- 音響カプラを自作してみる実験(の回想録)
上へ
戻る