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To say Farewell to Personal Handy Phone system and WILLCOM...

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2021/01/13 PHS契約解除に伴う追記

目次

1. 概要
2. パーツ
3. 製作・回路
4. 実験
5. あとがき
6. 参考にさせていただいたサイト・情報

1. 概要

PHSと簡易音響カプラを用いたFAX受信実験では、手で頑張って押さえながらFAXを2400bpsの低速で送受信していました。
しかし、FAXを送信する間の数分間、ズレたり雑音が入らないように手で押さえつけるのは、手も精神も疲れるので、イヤホンマイク端子を使用してPHSの音声をモデムに入出力するための、ハイブリッド回路によるアダプタを製作しました。
つまり、かつての「セルラーケーブル」に相当するものです。

おことわり:
「2020年現在日本国内でPHS通話サービスを提供している唯一の電気通信事業者」が、2021年1月31日を以てPHS通話・通信サービスの提供の終了を予定しています。
本記事の実験は、2020年9月頃から取り組んだものであり、PHS通話・通信サービスの提供終了日時に対する時間的制約のもとで実験を行いました。
そのため、調整が不十分な点が多く残されており、本記事の説明にも多くの瑕疵が存在する可能性が高いと思われます。
しかしながら、前述の通り、今後再実験・再調整を行い、本記事を修正することは事実上不可能でであり、また、この記事をお読みの方が再現実験を行う時間も殆ど残されておりません。
これらのことをご理解頂いた上で、本記事をご覧になるようお願いいたします。

(以下、2021/01/13追記)
2021年1月11日付で、この実験で使用していたPHSについて、「2020年現在日本国内でPHS通話サービスを提供している唯一の電気通信事業者」とのPHS契約を解除し、W-CDMA/LTE方式の携帯電話契約に変更しました。
こちらでは、この実験を再現・追試することはできなくなりました。
(追記終)

2. パーツ

(ここまではPHSと簡易音響カプラを用いたFAX受信実験(以降、「前回」)に登場したものです。)
前回に引き続き「構成機器」「要素」が半分を占めています。
このほかに、インターネットへのダイヤルアップ接続のためには、PHSから発信可能なアクセスポイントを提供しているプロバイダとの契約が必要となります。
今回は、電源部分に定電流ダイオードを用いました。パーツ調達のついで買いです。

ST-71はセンタータップ付きのマッチングトランスです。電話回線のインピーダンスは平衡600Ωであり、各種電話機もこれに結合するよう設計されているため、このトランスを用います。
ただし、PHS側は不平衡であるため、モデムからの2線のうち片側はGNDに接続されます。
FOMA規格平型端子は、かつての携帯電話によく用いられていた、四角形のイヤホンマイク端子のうち、充電端子を兼ねないものです。
秋月電子通商で販売されていたφ3.5ステレオイヤホン-平型端子変換ケーブルを分解して入手しました。
オス側(イヤホン側)をのぞき込んで、両端に切り欠きがある側を下にして、右から1, 2, 5番ピンがそれぞれ、GND, MIC-IN(PHSへの音声入力), EP-LOUT(PHSからの音声出力)端子となっています。

なお、端末設備等規則第13条第3項において、「アナログ電話端末は、電気通信回線に対して直流の電圧を加えるものであつてはならない。」と規定されています。
また、電気通信事業法第69条において、「利用者は、(中略)電気通信回線設備に端末設備を接続したときは、当該電気通信事業者の検査を受け、その接続が第五十二条第一項の総務省令で定める技術基準に適合していると認められた後でなければ、これを使用してはならない。(以下略)」と定められています。
すなわち、今回のパーツのうち、無改造の、家庭用FAX・モデムのそれぞれ単体を除いて、今回の実験で使用している実験装置を、電話回線に接続することは法律で禁止されています。
違反して、電気通信事業者(NTT等)の設備に損害を与えた場合、電気通信事業法第180条に基づき、2年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑に処せられます。

今回の実験で使用している実験装置を、絶対に、事業用電気通信回線設備(平たく言えば電話回線)へ直接接続しないでください。

3. 構成・回路

今回製作した回路は次の通りです。


ハイブリッド回路は、2線のみで送受信される音声信号を、分離・混合するための回路です。
マッチングトランスの1次側はPHSの音声入力に接続されています。モデムから出力された音声は、2次側から1次側に誘導され、PHSに入力され、アクセスポイント・FAX機器等に伝送されます。
マッチングトランスの2次側のセンタータップにはPHSの音声出力が接続されており、2次側の両端は、モデムからの2線の片方と660Ωの抵抗にそれぞれ接続されています。
電話回線のインピーダンスは600Ωであるため、660Ωの抵抗をつないだ側と、モデムからの2線の片方と接続した側には、ほぼ同じ量のPHS音声出力による電流が流れることとなります。
このとき、センタータップから入力されているため、トランスの2次側コイルには、センタータップから、両端に向かって同じ量の電流が流れることとなり、1次側への誘導は、差し引きゼロとなります。
そのため、PHSからの音声出力は、音声入力にほぼ回り込むことなく、モデムからの2線に重畳することができます。
ちなみに、2線に並列(回路図のTO MODEMの1-2間)に圧電スピーカ(セラミックイヤホン)やアンプを接続すると、スピーカのないモデムでも、ネゴシエーション中や通信中の音を聞くことができます。

なお、この構成された装置は、絶対に電話回線へ接続してはいけません。 同様に、絶対に、モデムが電話回線に接続された状態で、電話回線に並列に圧電スピーカやアンプをつないではいけません。

4. 製作・実験

まずは平型端子の加工を行います。
ケーブルを分解して手に入れた平型端子の、ピンと基板側の対応をテスターを用いて調べ、1,2,5番ピンに対応するものを使用しました。
このとき、モノラル出力でPHSからの音声出力(=アクセスポイントやFAX機器から送話された音声)を受けるため、6番ピンとGNDの接続を切断しておきます。

(EP-ROUTの配線のランドのパターンを切断し、ランドを流用して、MIC-INに半田付けしています)

ブレッドボード上に構成したので、大変見づらいですが、構成した実験装置全体が次の通りです。

(左:装置全景 右:ハイブリッド回路部分)

このブレッドボード上に構成したものをユニバーサル基板に移植したものがこちらです。すこしだけスッキリしました。


この装置を使用した実験の動画を撮影しました。ブレッドボード上の仮組みの際に撮影したものです。音声はありません。


モデムは、初期設定ではV.90でのネゴシエーションを開始しますが、PHSみなし音声方式だと56kbpsも出ることはないので、V.34指定(AT+MS=V34)とします。
PCでダイヤルを始めたら、PHSでアクセスポイントに電話をかけます。
ATコマンドでATX1を指定(V34と組み合わせる場合は、ATX1;+MS=V34)しておけば、PHS発信時の音(プップップップッ...という音)をモデムが話中音と間違ってBUSYを返すことを防止できます。

V.34によるネゴシエーションが完了すると、エラー制御LAPM・圧縮V.42bisで接続を確立して、認証が行われてIPアドレスを取得し、インターネットへの接続が完了します。動画では16.8kbpsで接続されました。
PHSが32kbps ADPCM(サンプリング周波数8kHz=4kHzまでのアナログ音声用)であることを考えると、V.34 のうち、2400baud・1変調あたり7bitが無線音声で伝達できているのは品質として十分と考えられます。
インターネットへの接続が完了すれば、あとは、普段通りの手順でブラウザから様々なサイトにアクセスできます。もちろん、16.8kbpsの速度での転送となります。
しかし、2020年現在ではかなりの低速となってしまった通信速度で、閲覧に耐えうるメジャーなサイトはかなり減ってしまっています。
そこで、3G/4G方式携帯電話でのパケット通信速度の制御が行われた状態(128kbpsベストエフォート程度)でも閲覧可能といわれている、「阿部寛のホームページ」を実験対象に選びました。前回の音響結合2.4kbpsでも10分近くかけてもなんとか閲覧可能でしたので、16.8kbpsでは大きな問題なく閲覧できています。
動画では1回タイムアウトしていますが、プロバイダからのDNSレコードの取得がFirefoxのタイムアウトに間に合わなかったためと考えられます。

ついでに、FAXも再実験してみました。前回の実験時と比較して、同じFAX内容で高速に送受信が完了していることから、音声信号を直接モデムに入れることで、音響結合よりも通信品質が高くなることが分かります。

(茨城なとぅー先生のご厚意で、実験用に画像を使用させていただいております。GRATEFUL TO @MofuNattou !)

この動画では、ユニバーサル基板上に回路を本組みしたので、ブレッドボードには2SC1815を1石使用した簡易アンプを組んで、モデム-ハイブリッド回路間の2線に並列に接続して、ネゴシエーション時の音声も収録しています。

5. あとがき

前回のあとがきに書いた「セルラーケーブル」を平型端子用に実際に製作してみました。
平型端子のイヤホンマイクは某ECサイトで1000円近くするのに対して、秋月電子通商でのイヤホン変換コードは100円だったため、後者を購入・分解して使用しました。

みなし音声方式では、V.90の56kbpsで接続は成り立たないので、V.34指定としています。
V.34の16.8kbpsで接続可能であれば、V.32/V.32bisの9.6kbps/14.4kbpsでも接続可能なように思われますが、V.32/V.32bisを指定した際は、なぜかLAPMによるエラー訂正がコネクション時に成立せず(固定電話回線では成立する)、通信が事実上できませんでした。
一方、同じ9.6kbps 2400baudでも、G3 FAXのV.29は接続が成立しているようです。
原因を探る時間はありません。

ブレッドボードでの実験成功が9月初頭なのに対して、本記事公開がサービス終了1か月前、契約変更期限半月前というここまで遅いタイミングとなったのには理由があります。
9月の実験の直後、ハイブリッド回路の理解を深める目的で、PHS出力を1次側に入れ、2次側に誘導された信号をモデムに送り、PHSへの入力を、モデムと直結している2次側センタータップから取り出す回路(このページの回路図のPHS入出力を逆にしたな回路)での実験をブレッドボード上で行いました。
この実験は成功し、その回路をユニバーサル基板に組んだところ、全く動作しなくなってしまいました。
おそらく、ブレッドボードの抵抗や寄生容量が偶然よい方向に働いていたのだとは思いますが、原因を探るために、冬になるまで定数変更を行ったり、部品を追加したりしたものの、結局解決しませんでした。
一方、試行錯誤の傍らで、「2020年現在日本国内でPHS通話サービスを提供している唯一の電気通信事業者」からのW-CDMA/LTE方式の携帯電話への契約変更を急ぐよう知らせるダイレクトメールの波状攻撃に押し負け、当初の回路に復元して、急造半田付けで記事を作成しました。
ユニバーサル基板に作り上げた挙句、それが意味を為す時間は1か月もないという、大変遺憾極まりない作品となりました。抵抗の足の高さはバラバラ、トランスのビニール被覆は溶け、PHSと基板間のケーブルも、ワイヤラッピング用ワイヤをデタラメに切ったものを使う有様です。

前回記事のあとがきにも書きましたが、サンプリング周波数8kHz, AMRによるハイブリッド符号化, ビットレート12.2kbpsの第3世代携帯電話(W-CDMA方式)は、会話は可能でも、モデムで変調されたデータ通信に殆ど耐えうる品質ではありません。
第3.9/4世代携帯電話のVoLTE技術における、Enhanced Voice Services(EVS)コーデックでは、最大128kbpsまで動的に帯域が切り替わるため、もしかしたら、みなし音声通信もギリギリ可能か・・・?と芥子粒程度の期待をしています。PHSのADPCM 32kbpsの安定感には及びませんが・・・(-"-;

最後にもう一度。
絶対に、今回の実験で使用している実験装置を、事業用電気通信回線設備へ直接接続しないでください。

_/_/_/_/_/
(以下、2021/01/13追記)
この実験で使用しているアクセスポイントは、「全国共通アクセスポイント」という名のナビダイヤルのため、PHSから発信すると、20秒10円の料金がかかります(通常の固定電話宛なら30秒10円)。
これが、モデムのみなし音声通信のように、長時間にわたると、その通話料は積み重なっていきます。
特に、定数調整や通信方式変更等を試行錯誤し、1分程度のネゴシエーションの失敗を繰り返しているため、30円or40円×回数分の無駄な通話料もそこに上乗せされています。

結果、PHS契約終了時点での請求書は以下のようになりました。

すべての通話がこの実験のための発信ですので、通話料はすべてこの実験にかかった費用ということになります。
部品代以上にお金のかかる実験でした...(^^;;;;;;;;;
(追記終)

6. 参考にさせていただいたサイト・情報


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